ゼロ・ペイシェンス



世界初!エイズをテーマにしたミュージカル!
そんな売り文句さえ不要なほど、理屈抜きにメチャクチャ楽しい!
AIDSという病気について、実は何も知らなかったんだな、って事を、
押しつけられるのではなく、分かりやすく、底抜けに楽しく教えてくれる。
ストーリーはドラマティックだし、ミュージカルも明るく楽しく、
みんな素っ裸になって踊り飛びはね、いろいろと楽しませてくれる。
でも、この映画、楽しいばっかりじゃなく、チャンと製作者の
”AIDSに対する正しい理解”を深めようとする意志が感じられるから、
軽いだけじゃなく、凄く共感できるんだな。


タイトルの”ゼロ・ペイシェンス”には、
AIDSに初めてかかった人間である”0号患者”という意味の他に、
"PATIENT ZERO"つまり、”我慢できない”と言う意味も込められている。
その通り、抑圧され差別され、マスコミのいいネタにされ続けてきたHIVキャリアたちの
怒り、憤りが描かれている。
健常者には推して知る由もない彼等への偏見と好奇の目。
実際に当事者としての立場に立たされなければ分からないのは当然で、
この映画の主人公リチャードも、知らない人なりの勝手な解釈をして、
AIDSという病気に対して、とんでもない報道をしてしまう。
初めは、偏見に満ちた態度と言葉で、マスメディアの権化のようだった彼が、
AIDSの0号患者とされたゼロと出会い、意識を変えていく。


AIDSという原因不明の病気にかかった人たち。
この映画の中では、その病気と戦うのではなく、共に生きていこうとする人たちが描かれる。
そうだよ。AIDSってったって、単に治療法が分からない病気なだけだし、
SEXを介して伝染するってだけじゃない。
どんな人にだってかかる可能性がある訳だし、どんな真面目な人だって、
かかる可能性が0って訳じゃないでしょ。
運悪く、この病気になってしまったからと言って、彼等を特別視する理由にはならない。
だから、こんなにファンキーで明るくAIDSについての映画を作ってみても全然、OK。
巷に溢れるAIDSに関する情報を集めるよりも、
この一本見れば全然OK。


素晴らしい映像に素晴らしい音楽。
これほどパワーに満ちあふれたゲイ映画を僕は知らない。