
アルモドバル監督は、この後に撮る「オール・アバウト・マイ・マザー」でアカデミー賞外国語映画賞を受賞して、最新作「トーク・トゥ・ハー」では監督賞にまでノミネートされ、脚本賞を受賞するまでになったけど、その世界的ブレイクのきっかけとなりえた傑作は、やっぱりこれだよなー。もともと群像劇を描かせたら「欲望の法則」や「神経衰弱ギリギリの女たち」のように、毒を忍ばせつつ見事にまとめる手腕はあったんだけど、この映画で、そこに"人間の悲しさ"を感じさせるようになった。人生、どこで何が変わるか分からない。そして、その変化は一度きりとは限らない。人生が終わるまで変化は続く。一人の青年が、2人の女と2人の男に関わったことから、回り始める人生の歯車。果たしてその歯車が何を動かすのか、そして歯車が止まったとき、その形はどうなっているのか。複雑に絡み合い、そして行き着いた先。そして出来上がった形。それまで、どこかオシャレで毒の効いたコメディの多かったアルモドバルが、人間の生身の温かさを感じさせるようになった映画だと思う。それに、この主役を演じた青年リベルト・ラバルの存在は大きい。とにかくイタリア男のフェロモンがむんむんしていて、画面に映っているだけで体中からセクシーな体臭が匂い立つよう。しかも映画の中でオールヌードまで披露しちゃうんだから堪んないやね。 |
失ってしまった想い出かぁ・・・こんな形で想い出を思い起こすのも悪くないかも。本当は、誰も今の生活を変えたいなんて思っていない。何故なら、今の自分を想い出にしてしまいたくないから。あのおじいさんが、家を移りたくなかったのも、それまでの想い出を過去のものにしたくないから。形として、自分の周りに置いておきたかったからだと思う。それでも、生活は時として変化し、気が付けば、昔の自分は過去になっていく。他人の中でも、自分という存在は、時の流れの中でいつしか過去の想い出になってしまう。一通の手紙によって掘り起こされる想い出の中の一人の人。そして、今の自分とこれからの自分の人生。なんか、いろんな自分の人生さえも振り返ってみたり、これからの自分を想像してみたりした。でも、大切なのは、今生きて暮らしている自分。過去に捕らわれていては前に進めない。過去は過去のものとして振り切る勇気が必要なんだ。 偶然が幾重にも折り重ねられたこの物語は、決してラブ・ストーリーではない。丹念に紡がれ、織り込まれていく自分探しの物語。織り上げられていく物語の一つ一つが、温かく、楽しくて、哀しくて、愛おしい。 |
こんなに心動かされる映画とは、全く思っていなかった。あの炭坑の町に住む人たちと同じく、ボクは彼のことを、軟弱な少年の夢とばかり思っていた。こんなに男気に溢れた言っちゃえば”スポ根物”だったのでびっくり。イギリスの炭坑街。不況により、閉鎖されようとしている炭坑と、デモを起こす労働者たち。少年の家は、炭坑で働く父と兄、母親はすでに亡くしていた。彼は、ただバレエダンサーになりたかった。初めはそこに深い意味などなく、ただ、体を動かし何かを表現することに楽しさを見いだしただけだ。しかし、バレエは女のする物という偏見が根強く残るこの街で、彼がバレエを続ける事は容易いことではなかった。しかも、彼がバレエを続けるための障害は、偏見だけではなく、街全体の状況も大きく立ちはだかっていた。彼が父親にバレエを止めろと言われ、街に飛び出し、狂ったように踊り続けるが、やがて路地裏の大きな壁に行く手を阻まれる。打破しなければいけない壁の高さが嫌と言うほど感じ取れた。彼はここからどうやってこの状況を乗り越えるのか?それはクリスマスの晩に訪れた。親友とバレエの練習をするビリーの姿を見た父親は、いつものようにショックを受けるが、ビリーは父親の前でバレエを踊ってみせる。その姿は千の言葉を並べるよりも大きな説得力を持っていた。ようやく息子の才能に気付いた父親は、自分が父親として、息子に何をしてやれるかに気付く。炭坑のストライキにより、仕事を失い、生きる目的さえ無くしかけていた父親だったが、息子の踊る姿を観、父親としての自覚を取り戻していく。そして、ロイヤルバレエ学院のオーディションの日を迎える・・・ 何処にも出口のない様な街で、一人の少年が夢を抱いた。その夢が、行き詰まった街の行き止まりの壁を壊した。初めはその壁の向こうに何があるか、誰も知らなかった。壁を壊す勇気のあるのは少年しかいなかった。しかし、その壁が壊れたとき、それまで思いもしなかった未来が開けていた。 ボクがこの映画をみて何より嬉しかったのは、ビリーの親友で実は彼に好意を抱くマイケルの存在。親友であり、恋心を抱くビリーが遠くに行ってしまう。11歳の子供だから、まだその事の重大さに気付いてはいないが、彼が感じた寂しさは痛い程良く分かる。自分の本当の姿を見せることが出来た街で唯一の友人を失う。そんな彼があの閉鎖的な街でどんな人生を歩むのか、ビリーの成功以上に心配だったが、この映画はラストシーンで最高にハッピーな展開を用意してくれた。一人の少年が見た夢が、こんなにもこんなにも大きな未来を孕んでいたこと。その奇跡に、ただただ涙が流れるばかりだった。 |
観ていると肌がひりひりとしてくる感覚に襲われる。ドラッグを描いた映画は数あれど、ここまで痛い映像に包まれた映画は無い。ドラッグを想像力を刺激するカルチャーとしてではなく、人体を蝕む毒として真正面から描いている。こんなに怖い映画は無い。春・夏・秋・冬。4つの季節で主人公とその恋人、友人、そして母親の辿る絶頂と転落。前作の”π”以上にエキセントリックな映像が、全編にわたって綴られ、気の休まる暇も無い。転落が始まる”秋”からは止まることを知らぬ急降下。心地よい疾走感なんて気分とは180度違う、吐き気を催すほどの転落。特に母親を演じたエレン・バースティンの鬼気迫る演技は見るものの心をざくざくに切り刻んでしまう。紛れもなく、一言で凄いと言える映画。でも、だからと言ってお勧めできるような映画じゃない。必ず、個人の判断において、ご覧になってください。 |
僕の大好きな監督ピーター・ジャクソン監督の最新作にして、ファンタジー映画の歴史、いや、世界の映画の歴史を変える超大作。果たしてその内容は、想像以上の内容だった。もう、徹頭徹尾、圧倒されっぱなし。中盤、トンネルを抜けた辺りから流れ出した涙は、最後まで収まる事無く流れ続け、終わってからもしばらく席を立つことが出来なかった。で、僕が一番気に入ったキャラクターはなんといってもアラゴルン・・・ではなくて、サム!きゃー、ショーン・アスティンってこんなに可愛かったっけ?!常に、フロド様が心配ですモードで後ろをチョコチョコと着いて来るサム。きゃーカワイイ〜!むぎゅーって抱きしめたくなる〜(笑)ちょっとはだけた胸元から見える胸毛がまたセクスィ。後半、彼の見せ場があるんだけど、そこでまだだーっと涙が復活。さぁ、この先待ち受ける冒険には、どんな活躍を見せてくれるのか・・・って一年後なんだよなー。全てが完結する2年後までは、何があっても死ねないな。うむ。 |
ああ、凄い・・・もう気が遠くなるような映像が、惜しげもなく次から次に目の前に現れては消えていく。夢のような3時間。今回は、ばらばらになった旅の仲間たちが、それぞれの戦いに進んでいく。そして、一人一人のキャラクターがはっきりしていき、一人一人の物語での役割がより鮮明に浮かび上がる。それは、この壮大な世界を舞台にした壮大なストーリーを覆い尽くす。はぁー、こんなに凄いのか、この物語は・・・決してハッピーエンドでは終わるはずのない物語なのは分かってる。しかも、それをこの映画に出てくる登場人物が、自分たちが行き着く結末を知りながら、それぞれ戦っている。はっきり言って、重く、暗い。しかし、その結末は、必ず僕らに想像もしないくらい大きな勇気と希望を教えてくれるはずだ。それも分かってる。今はその到達点にいたる途中。まだまだこの物語は旅の途中なんだ。ああ、来年の「王の帰還」を早く見たい。でも、それを見たら、彼らの旅も終りを告げるという事なんだよな。早く終わらせてあげたいと思いつつも、その最後を見たくない。こんな矛盾、たまんないよー!!この旅の最後を見届けたとき、僕は一体どんな涙を流してるんだろう? |
