蜘蛛女のキス



とても理解しがたいが、とても人間らしさに溢れた映画だ。
モリーナとバレンティン、二人の囚人。
一人は同性愛者という罪で、一人は政治犯と言う罪で。
決して交わるはずのない二人の人生が重なった。
二人は同じ檻の中に収容され、お互いが持たざる心を補い合う。
一人は信念のために生きる強さを知り、
一人は忘れ去っていた人間としての優しさを取り戻す。


モリーナは、生きることの意味を見いだせずにいた。
同性愛者として生きる事すら否定されたこの国で、
何を信じて生きればいいのか。
しかし、同じ房に入れられたバレンティンの生き様に触れ、
彼の信念に生きる事を受け入れた。
だからこそ、バレンティンに連絡の頼みを受けたとき、
断らなかったのだろうか?
それとも、ただ、愛する人の頼みだから受けたのか?
どちらにしろ、彼女は幸せのうちに死んだのだろうか?
それは、モリーナ本人にしか解らない。


劇中で語られる映画の中で、
女は愛する男の信念を知り、その信念に殉じて死んだ。
モリーナは、自分を待ち受ける運命を理解していた。
だからこそ、自分の母親にお金を預けたのだろう。
彼女を動かしたのは、愛なのか、それとも信念なのか。
人の行動は時として理解しがたいものになる。


分かることはただ一つ。
死ぬときは、愛する男のために死にたい、と言う事だけだ。