ブエノスアイレス

ウォン・カーウェイ監督は、”恋する惑星”と”天使の涙”と、
最近、ストーリーの一貫しない散文的な映画をスタイリッシュに描いていた。
でも、それは一見スタイリッシュではあるが、中身はと言うと、残念ながら、
僕には自己満足で撮ったとしか思えない映画でしかなかった。
この映画も、そんな流れで撮られた自己満足な映画なんだろうと、
幾分、二の足を踏みながら観た。
すると、そこにあったのは、とても切ないラブストーリーだったんだ。
この映画には伝えようとすることがあり、監督も、それを伝えようとしている。
主人公のトニー・レオンがいい。
全然タイプじゃないんだけど、この映画の彼には惹き付けられて止まない魅力がある。
レスリー・チョンから別れて次の一歩を踏み出したくても踏み出せない姿、
やるせない想いから鏡を殴って割るシーン、
風邪を引いてふらふらになりながらも、チョンのために食事を作るシーン、
ボイスレコーダーに声を吹き込んでいるシーン。
どれもが、痛みと苦しみに満ちている。
不思議なのは、そんな痛みと苦しみを感じさせながらも、
そこはかとない希望が漂っていること。
特にラストで見せる微笑みには、この先に続く道が見えたような気がした。
地の果てまで続く、限りない道が。
